ステンレス低ひずみ溶接虎の巻 溶接「虎の巻」ニュース Vol.14

こんにちは。溶接「虎の巻」ニュースです。

使わなくなったために無くなってしまったもののお話をしましたが、本来必要不可欠であるのに、使うのがめんどくさかったり、サボったりしているうちに大切なものを失くしてしまうことってよくあることなのかもしれません。

そして、失くして初めてありがたみがわかるものなのですね。

深刻な問題でいえば地球温暖化です。北極圏では氷がなくなりイヌイットの方々や良心ある科学者が問題提起されています。
取り返しがつかないことが起こる前に、先進国の国民にやるべきことがないのかって言われて耳が痛かったです。

でも、デジタル溶接機にパルス幅調整機能が復活してくれました。これも皆さんが使わないとなくなってしまう、絶滅の危機に瀕した天然記念物のような存在です。みんなで使って残しましょうね。恩恵を得るのは使用者なのですから。

★溶接情報TIG溶接機編

前回、低ひずみを実現するために、60度研磨のタングステン電極棒と、アルゴン+水素5%のガスを用意し、1ミリのSUS突合せ溶接の条件を、作ってみました。パルス電流135A、ベース電流4A、パルス幅20%、パルス周波数500サイクルでデジタル溶接機に入力して溶接スタートします。

プーンという高いパルス音と共に集中したアークでの高速溶接が実現しているはずです。
溶接ビードも通常の半分以下になっていると思います。速度は、従来の3倍以上になっていますよね。この時の平均電流は30.2Aです。ひょっとしたら電流をもっと上げたほうが良いかもしれません。この時はパルス電流を180Aまであげてみてください。そうすると、平均電流が39.2Aとなります。

パルス電流を135A~180Aの間で可変させ実際に溶接してみてください。この間にスウィートスポットがあるはずです。

★こうすればできる!低ひずみ溶接の「虎の巻」

ここで、低ひずみ溶接の虎の巻をまとめてみます。

  • 良質なタングステン電極棒研磨機を使って電極棒の先端管理(面粗度)を整える。研磨角度は鈍角(60度)とする。
  • デジタル溶接機を準備する。
  • アルゴンガス+水素5%混合ガスを準備
  • パルス幅調整機能を有効に利用した入熱管理をする。
  • パルス周波数は500サイクルに設定。

このようにすることで、アークの集中した驚くべき低ひずみ溶接が実現致します。

これは単位時間当たりの母材への入熱が減少したからなのですね。

手動溶接するには、これで十分アークの集中した高速溶接が実現します。

これ以上の高速溶接も実験したことがあります。当然、手では速度が速すぎて追いつかないため、直線自動溶接装置を使いました。

直線自動溶接装置は任意に溶接速度を設定できますので、逆に2.5m/分という高速度を最初に設定してから、溶接条件を入力していきました。この時は、高速溶接を実現するために、ガスもアルゴンガス+水素7%にして、アーク温度を高めました。パルス幅調整機能を使い、平均電流をどんどん上げていったところ、溶接ビード幅3ミリ弱位で2.5m/分の高速溶接が現実となりました。

こうなると、TIG溶接の領域を凌駕しており、プラズマ溶接に肉薄するものでした。これはあくまで実験的なものですが、TIG溶接法の優秀性と可能性を証明するものであります。

正直に告白するとYAGレーザー溶接にどこまで迫れるか実験したのです。結果は大満足で、使い勝手とコストを考えると、もう圧倒的に勝ったな!と一人自己満足を感じていたものです。

TIG溶接は、YAGレーザー溶接ほど集中したエネルギーは作れませんが、その分ワーク精度をYAGレーザーほどシビアに管理をしなくても溶接が可能であるという大きなメリットもあります。簡単にいえば気軽に使えて身近な溶接機であると言えます。いやー、TIG溶接機の可能性は凄いですねえ。びっくりです。使われない機能が眠っているのです。

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